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丹治 史也 准教授、岩澤 敦史 特任助教が著者となる学術論文が国際誌『Journal of Primary Care & Community Health』に掲載されました

論文タイトル

「Association of Suicidal Ideation With Physical Health Conditions, Mental Health Conditions, and Multimorbidity and the Modifying Role of Emotional Social Support: A Cross-Sectional Study in Japan」

著者名

Fumiya Tanji, Atsushi Iwasawa

雑誌名

Journal of Primary Care & Community Health

研究概要

日本の自殺死亡率は世界的に高く、日本国でも秋田県の自殺死亡率は長年高い水準で推移しています。2000年から2019年にかけて日本の自殺死亡率は低下傾向にありましたが、2020年以降は再び増加傾向に転じています。これは秋田県でも同様であり、自殺予防対策が求められています。

自殺死亡の主要な要因に自殺念慮と自殺未遂歴が挙げられます。特に、自殺念慮は通常、自殺未遂や自殺に先行するため、自殺予防対策として自殺念慮を抱く方、抱くリスクの高い方への支援が重要だと言われています。自殺は複数の要因が複雑に絡まって生じると言われていますが、精神疾患や身体疾患は特に大きな影響を及ぼすと報告されています。しかし、身体疾患のみ、精神疾患のみ、両方を持つ場合(Multimorbidity)で自殺念慮に及ぼす影響に違いがあるかどうかはエビデンスが確立されていません。

また、自殺予防対策においてソーシャルサポートが重要であると言われています。特に、情緒的ソーシャルサポートはうつ病等の精神疾患に対して保護的に働き、自殺予防に寄与していると報告されています。身体疾患を持つ方でも精神疾患を経験することも多く、身体疾患と精神疾患の両方を持つ方も少なくありません。しかし、身体疾患のみ、精神疾患のみ、Multimorbidityと自殺念慮との関連に対して、情緒的ソーシャルサポートの保護的な役割に違いがあるかどうかは明らかではありませんでした。

本研究では、秋田県A地域の住民を対象とした調査結果を用いて、身体疾患のみ、精神疾患のみ、Multimorbidityと自殺念慮との関連、およびその関連に対する情緒的ソーシャルサポートの役割について検討しました。その結果、精神疾患のみ、Multimorbidityの場合で自殺念慮を抱く者の割合が有意に多いことが分かりました。また、情緒的ソーシャルサポートは精神疾患のみの者に対しては保護的な役割を示しましたが、Multimorbidityの者に対しては保護的な役割を示しませんでした。本研究の結果から、自殺予防対策を講じる上で、健康状態に応じたソーシャルサポートのタイプを特定していくことが重要であることが示唆されました。

秋田県内の自治体や民間団体等と連携し、地域における自殺予防対策事業を推進することにより、地域の自殺予防対策強化を目指して参りたいと思います。