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2023年01月31日(火)
地域医療患者支援センター・がん相談支援センター 川村 直子 難病診療連携コーディネーターが著者となる学術論文が『日本難病医療ネットワーク学会』において最優秀口述演題賞を受賞しました。
論文タイトル
秋田県の指定難病患者の医療および生活状況の実態と課題
著者名
川村直子、菅原正伯
掲載誌
日本難病医療ネットワーク学会誌に投稿中
研究等概要
平成27年に国は、新たな難病医療提供体制を整備するために、各都道府県に難病診療連携コーディネーターを配置することを決めました。この体制整備は、難病診療連携拠点病院・協力病院が中心となって、在宅医療機関や就労支援機関、国の機関とのネットワーク化を図り、早期に正しい診断や必要な医療の提供を行い、難病の患者・家族が地域で安心して暮らすことができる環境を整えることを目標にしています。秋田県では令和元年に秋田大学医学部附属病院を難病診療連携拠点病院に指定して、令和3年には難病診療連携コーディネーターを拠点病院に配置し、新たな難病医療提供体制づくりを進めています。秋田県で新たな難病医療提供体制構築を推進していくには、秋田県の難病患者の医療・生活状況の課題を念頭に方略を考慮しなくてはなりません。そこで、令和3年に秋田県在住の難病医療費助成更新者を対象として、医療・生活満足度に関するアンケート調査を実施しました。医療・生活満足度に影響する因子を多変量解析した結果、秋田県の難病患者の医療満足度は消化器疾患患者、通院時間が長い、通院する上での課題や不安はない、で有意に正の関連を示し、女性、神経・筋疾患患者、骨・関節疾患患者、視覚疾患患者、通院先の病院では満足できる治療が受けらない、で有意に負の関連を示しました。また、秋田県の難病患者の日常生活満足度は、病気について職場に報告している、職場で不満や困難なことはない、で有意に正の関連を示し、年齢が高い、神経・筋疾患患者、身体障害手帳を取得している、日常生活行動に介助を要する、収入が少ない、病気に対する社員の理解が少ない、で有意に負の関連を示しました。これらの結果から、秋田県の指定難病患者の医療・日常生活満足度を高めるには、専門性の高い医療にアクセスできるよう、医師の確保や交通網の整備、通院介助者の確保に加え、オンライン診療(遠隔診療)の体制整備が有効だと考えられました。また、職場で適切な配慮を受けて仕事と治療を継続するには、労働者本人が職場に報告でき、企業と医療機関が連携しながら支援できるよう、職場への報告の重要性と勤務情報提供書および主治医意見書の活用を周知していくことが必要だと考えられました。本研究の実施により、今後進めていくべき課題が明らかになりました。秋田県版難病患者療養ハンドブックを作成中で、令和5年4月頃には活用していただける見込みです。今後は、遠隔診療システムの構築を目指していきます。
参考URL
https://nanbyo-net.com/congress_past6.php