お知らせ

2024年03月05日(火)

総合臨床教育研修センター 渡邊 健太 特任助教が著者となる学術論文が国際誌『Cancers』に掲載されました

論文タイトル

Helicobacter pylori Eradication Does Not Adversely Affect the Clinical Course of Gastric Cancer: A Multicenter Study on Screening Endoscopic Examination in Japan

著者名

So Takahashi, Kenta Watanabe, Sho Fukuda, Tatsuki Yoshida, Takahiro Dohmen, Junichi Fujiwara, Mari Matsuyama, Shusei Fujimori, Masato Funaoka, Kodai Shirayama, Yohei Horikawa, Saki Fushimi, Shu Uchikoshi, Kengo Onochi, Ryo Okubo, Takao Hoshino, Toru Horii, Taira Kuramitsu, Kotaro Sakaki, Toru Ishii, Taiga Komatsu, Yuko Yoshida, Kenji Shirane, Tsuyoshi Ono, Yosuke Shimodaira, Tamotsu Matsuhashi, Katsunori Iijima

掲載誌

Cancers

研究等概要

慢性胃炎を引き起こすヘリコバクター・ピロリ菌は胃がんの危険因子であり、本邦では保険診療で積極的に除菌治療が実施されている。一方で除菌後には胃の形態変化(発赤陥凹の散在、陥凹型胃がんの増加、腫瘍表面に被覆上皮が発生など)のために、早期胃がんの発見が困難になる可能性も指摘されており、定期検査を受けているにもかかわらず見逃し胃がんが増加する可能性が懸念されている。このことから、除菌治療が実際に胃がんの化学予防に実質的な貢献をしているかどうかについては議論がある。我々は秋田県内の11の医療機関における2016年から2020年までの5年間の健診症例を対象に後ろ向き観察研究を実施した。新規に診断されたすべての胃がん症例をピロリ菌現感染群と除菌後群に分類し、多変量解析によって除菌治療による胃がんの深部浸潤との関連を調査した結果、ピロリ菌除菌治療は胃がんの深部浸潤とは関連していないことが明らかになった。

本邦を含む東アジアは世界で最もピロリ菌感染、胃がんが多い地域であり、ピロリ除菌および内視鏡健診による胃がん予防効果について特に関心が高い。除菌後胃がんの形態学的変化についての研究が盛んなのは主に東アジアであり、これまではハイボリュームセンターからの報告であったり、内視鏡的切除術が行われた早期胃がんの症例に限られた検討であったりしたために、一般化可能性を欠いていた。本研究は一般健診集団すべてを対象とし、胃がんのステージによる制限もない研究デザインであった点が斬新であった。除菌後胃がんの特性に由来する胃がん見逃しによる進行リスクを考慮しても、除菌治療が胃がんの臨床経過に悪影響を及ぼさないことが明らかになった。したがって、現行の2年毎に推奨されている対策型胃がん内視鏡検診における除菌治療はこれまで通り推奨されることの根拠を示した点で意義深い。

参考URL

https://www.mdpi.com/2072-6694/16/4/733

参考画像

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