お知らせ

2022年12月09日(金)

申請当時細胞生物学講座・現理工学研究科生命科学コース 山崎 正和 教授が責任著者となる学術論文が国際科学誌『Cell Reports』に掲載されました

論文タイトル

Tissue flow regulates planar cell polarity independently of the Frizzled core pathway

著者名

Tomonori Ayukawa, Masakazu Akiyama, Yasukazu Hozumi, Kenta Ishimoto, Junko Sasaki, Haruki Senoo, Takehiko Sasaki and Masakazu Yamazaki

掲載誌

Cell Reports

研究等概要

秋田大学大学院医学系研究科 細胞生物学講座 鮎川友紀助教、八月朔日泰和教授、山崎正和准教授らの研究グループは、上皮細胞の集団移動が物理的な力を介して平面内細胞極性と呼ばれる現象を制御することを明らかにしました。
体表面や管腔内面を覆う上皮組織において、体毛や繊毛は特定の方向に配向します。この現象は、平面内細胞極性(planar cell polarity:PCP)と呼ばれ、組織機能の発現において重要な役割を果たします。例えば、内耳の有毛細胞は、音の振動を効率よく感知できるように、特定の方向に向かって感覚毛を形成し、その配向性異常は聴覚機能の著しい低下を招きます。近年、PCP制御系の異常が二分脊椎症や僧帽弁逸脱症などの様々なヒト疾患の原因であることも報告され、その多彩な役割が注目されています。
体毛の配向性異常を呈するショウジョウバエ変異体からPCPを司る遺伝子が初めて同定されたのを契機とし、現在までに、ヒトやマウスを含む様々な動物において多くのPCP制御分子が見出されています。その中でも、7回膜貫通型タンパク質Frizzledや7回膜貫通型カドヘリンFlamingo等から構成されるコアグループ分子群は、PCP形成において中心的な役割を果たすと考えられています。その一方で、組織によっては、コアグループに依存しないPCP制御機構の存在が以前より示唆されています。例えば、ショウジョウバエ背板では、今から数十年前のPCP研究の黎明期にその可能性が提示されていましたが、現在においてもその分子機構は不明です。
本研究において我々は、Tissue flowと呼ばれる上皮細胞の集団移動がコアグループに依存せずにショウジョウバエ背板の感覚毛の配向性を制御することを明らかにしました。またこの過程において、Tissue flowが上皮組織の頂端側にある細胞外マトリックスを櫛(くし)として利用することで、自身の流れの向きとは反対方向に感覚毛を配向させることを見出しました。本研究により、Tissue flowが長年不明であったコアグループ非依存的PCP制御機構の実体であることが明らかとなりました。

参考URL

https://www.cell.com/cell-reports/fulltext/S2211-1247(22)01225-6