お知らせ

2022年08月09日(火)

医学科6年 鈴木 智也 さんの学術論文が国際誌『International Journal of Environmental Research and Public Health』に掲載されました。

論文タイトル

Cross-Country Student Perceptions about Online Medical Education during the COVID-19 Pandemic

著者名

Tomoya Suzuki, Anju Murayama, Yasuhi Miyata, Yasuhiro Kotera, Akihiko Ozaki, et al.

掲載誌

International Journal of Environmental Research and Public Health

研究等概要

コロナ禍では世界中の教育機関がオンライン化を強いられ、病院実習や解剖等の授業など、オンライン化に適していなかった医学教育もオンラインへ移行した。準備期間なく開始されたオンライン医学教育の現状調査は限定的である。そこで本研究では質的なインタビュー調査により、医学生視点の現状やメリット・デメリット等を調査した。
スノーボールサンプリング法で集められた13人日本人医学生と5人の海外医学生(ノルウェー、スロバキア、ハンガリー)の計18名が最終的な解析対象となった。2020年9月から10月に5つのメインテーマによる半構造的質問をもとにインタビュー実施。質問は①オンライン教育の実施状況、②利点と欠点、③教員、友人や家族との関わりの変化、④オンライン教育への意見、⑤特定の大学に所属する意味の5つであったが、自由な発言も許可した。
テーマ分析により、テーマ1は「時間の有効活用と柔軟性」、テーマ2は「技術トラブルとデジタルスキル不足」、テーマ3は「授業の質のばらつき」、テーマ4として「授業以外の経験の喪失」の4つに分類された。
テーマ1では、大学や外部病院までの通学時間がなくなり自由な時間が増えた。勉強や睡眠、好きなことを自由に自分の時間を有効活用というポジティブな意見が多かった。
テーマ2では、学生も教員もデジタル技術やインターネット環境への適応にばらつきがあり、不具合により授業が聞こえないトラブルや試験に間に合わなかったと訴える学生がいた。
テーマ3では、授業資料や講義内容を提供する教員側の質や工夫にばらつきがあり、学生にとって質問しにくく、学びづらい状況が生じていることが明らかになった。
テーマ4では、通学できないため、友人や教員との交流、研究や部活動などの課外活動が制限されたことにより、精神的なダメージを受けていた学生がいた。
以上のテーマ分析結果から浮き彫りになったのは、コロナ禍で学生側も教員側もオンライン化への対応にばらつきが生じたことだ。テーマ1のようにポジティブな過ごす方ができる学生もいた一方で、急な自宅待機等の変化に適応できず精神的なダメージを受けていた学生がおり、大学側のサポートは急務といえる。テーマ2〜4の結果を参考に考えられた具体案として、オンライン教育では特に一方的ではなく学生とのコミュニケーション(質疑応答や雑談を授業中や授業後にも設ける等)や教員側がオンライン教育での授業内容の工夫(接続不良を考慮して、口頭だけでなく配布資料にその内容を載せる等)を重視すべきであると考える。本研究結果が今後も継続されうるオンライン医学教育のさらなる発展に寄与することを願っている。