③慢性気道アレルギー炎症を制御する新規メカニズムの解明

慢性気道アレルギー炎症を制御する新規メカニズムの解明

遠隔医療センター

微生物学講座では、「免疫体質」を制御しうる細胞である自然リンパ球の研究を行っています。例えば、アレルギー炎症を起こしやすい人は、アレルギー体質とよく呼ばれます。近年、このようなアレルギー体質の原因に2型自然リンパ球(ILC2)という免疫細胞が関与していることが明らかになってきました。

ハススダストや花粉のようなアレルゲンは、タンパク質分解酵素活性を持っているため、吸引されて気道に侵入すると、気道上皮細胞に傷害を及ぼします。すると、障害細胞からアラーミンという液性タンパク質群(サイトカイン)が放出され、その受容体を持っているILC2が活性化します。ILC2は、その後増殖し、アレルギーの原因となるインターロイキン-5(IL-5)やIL-13という液性タンパク質を放出し、アレルギー炎症を誘導します。よって、喘息や好酸球性副鼻腔炎のような慢性的にアレルギー炎症が起きている場合、ILC2が過剰に増殖しIL-5やIL-13を過剰に産生することが問題となっていました。生体の機能を維持するためには、過剰に活性化したILC2を除去するメカニズムがあるはずですが、そのような生体の作用は今まで報告がありませんでした。そこで、私達はマウスに慢性気道アレルギー炎症を誘導し、活性化ILC2の運命決定機構を調べた結果、1)非常に活性化したILC2はTIGITという受容体を発現し「疲弊様ILC2」になること、2)疲弊様ILC2は近くにいるマクロファージにより除去されること、を明らかにしました。このような現象は今まで明らかになっておらず、「ILC2の活性化による細胞死」と名付けました。患者さんに、この細胞死を適切に誘導できれば、慢性アレルギー炎症の新しい治療法開発につながる可能性があります。

(参照:Yamada T et al., J Exp Med. 2023. https://doi.org/10.1084/jem.20222005

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